今回は、ピョートル大帝の精神安定剤的存在のエカチェリーナ1世さんの占いよ。
参照:wikipedia
エカチェリーナ1世さんは、エリザベータさんのお母さんね。
エリザベータさんは、以前クーデター前日にした占いを掲載したわね。
>>「明日、クーデター起こすんだけど、どうなるかしら?」
エカチェリーナ1世さんは、占いをした時はまだマルタさんというお名前だったわ。
まずは彼女の生い立ちから見ていきましょう。
エカチェリーナ1世の生い立ち
マルタさんはリヴォニアという、現在のラトビアの東北部からエストニアの南部にかけての地域の農民の娘だったの。
病気でお父さんが早くに亡くなって、お母さんだけでは生活を支えられなくなってしまったのね。
幼い弟妹がいたために、口減らし同然にある牧師の家に子守に出されたの。
この牧師がいた村でペストが流行り、村人は全滅に近い状態になってしまったのね。
そうして、村のペストが沈静して落ち着きを取り戻すと、礼拝のために新たな牧師が村に送られたわ。
この牧師の名前はグリュックさん。
グリュックさんは牧師館の台所でうずくまっているマルタさんを見つけて、自分の家に連れて帰ったのよ。
グリュックさんの妻は、最初こそ夫の慈善精神に呆れたものの、マルタさんは下女としてクルクルと気働き良く働く子で、妻の方も「コレは良い拾い物だった」と思ったようね。
そうしてマルタが年頃になると、グリュック夫妻の息子と恋仲になっていたのね。
慌てた夫妻は、マルタをスウェーデンの竜騎兵と結婚させたの。
しかしなんと、当時ロシアとスウェーデンは大北方戦争をしていたため、夫はすぐに戦線に赴き帰らぬ人となった。
一方、マルタさんはと言うと、ロシア軍がリヴォニアを占領した時に、グリュックさんによってロシア人の司令官ボリス・シェレメーテフに差し出されたわ。
「男ばっかりの軍隊だと何かと不便でしょ。彼女、ウチの下女なんだけど、良かったら身の回りのお世話をさせるのに使ってくださいな~。(好きにしていいから、我々に便宜を図ってね!)」
って感じね。
そしてロシア人将軍ボリス・シェレメーテフの家で奴隷とも妾とも召使ともつかない立場で暮らすことになったの。
この時代、ロシアの将軍たちは異国の女性を愛人にして、その愛人をお互いに交換し合うということをしていたらしいのよね。
そんな背景の下、マルタさんはシェレメーテフからメンシコフに譲渡されたわ。
メンシコフと言えば貧しい馬丁の子から、悪魔のような頭脳でのし上がってピョートル大帝に気に入られ、ピョートル大帝の一番の寵臣にまでなる人物ね。
そのメンシコフの元にいたマルタさんをピョートル大帝が気に入ったのね。
マルタさんも人の心の機微に敏感だったし、生まれ育った環境の厳しさからか人間味のある優しい人柄で、気性の激しい大帝と意気投合したのね。
けれど、そこで浮かれ果てないのが、さすが未来のツァリーツァ(皇后)、自分の立場を良く分かっていたのね。
大帝は女性に困らず、いつ飽きられるかも分からない。
自分のものなど何一つ持たない、後ろ盾のないマルタさんが、今後どうなっていくのか心配になるのも当然よね。
と、言うことで、ここからマルタさんのこの先を占っていくわよ!
エカチェリーナ1世の占い結果
それじゃぁ、占い結果をまとめていくわ!
今回もグランタブロウとケルト十字の2本立てよ!
グランタブロウ占いの結果
まずはグランタブロウの結果ね。
淑女のカードがマルタさん、紳士がピョートルさん、メンシコフさんはキツネかしらね。
こんな展開だったわ。
マルタさん、凄いわぁ~・・・
と思うのは、自分(淑女のカード)と皇帝(紳士のカード)が同じ一番上の列に在ることよね。
なんて言うか、皇帝に対してへりくだらないというか、自分の上の立場として置かないというか…
地位の違いを意識していないのよね。
「同じ人間」として見ていたとも読めるわよね。
そのくせ、メンシコフ(キツネのカード)はちゃっかり一つ下の段に在るから、マルタさんが自分の(皇帝に対する)影響力は認識していたと読めそうね。
さて、今回のタブロウの最初の3枚は「指輪」「ネズミ」「淑女」ね。
皇帝との婚姻を目指しているけど、ネズミの存在によって邪魔されている状況と読めるわね。
けれど、一番最初に「指輪」のカードが出ていることから、事実婚になっているという状況ね。
マルタさんと皇帝の間に在るカードは、「本」「太陽」「棺」ね。
マルタさんは「本」のカードが示すように、知識を得れば「太陽」のカードに至り、皇帝は「棺」のカードを経て「太陽」のカード至るわけね。
「棺」のカードから、何かを終わらせたり清算することが想像できるわ。
これは妃エウドキーヤさんとの関係を清算することを意味しているように見えるわね。
つまり、マルタさんは知識と教養を得れば目的達成(皇帝との婚姻)に至り、皇帝はエウドキーヤさんを片付ければ目的達成という状態ね。
彼らのカードは一番上の段に在るから、それぞれ自分たち次第で解決できる状況でもあるわ。
そして紳士のカードの右には「百合」のカードね。
これは精神的な充足を意味しているわ。
マルタさんといる限り、皇帝は精神的に安定するという感じね。
これからどうなるのか?
というマルタさんの相談に対して、この百合のカードが答えを出していると思うわ。
存外心配しなくても、幸せな家庭が待っているという感じね。
今回の占いでマルタさんが求めるものはもう出ているけれど、せっかくだからもうちょっと見てみましょうか。
淑女のカードの下に「星」のカードがあるわね。
これは、名声や成功が足元にあることを指しているわ。
カリスマとも読めるわね。
マルタさんの人間性が多くの人に受け入れられているということね。
一方で皇帝の足元には「道」のカード、そしてその右隣にメンシコフ(キツネ)!!
皇帝の決断はいつもメンシコフと共に・・・って事かしらね。
位置的にメンシコフの傀儡と言うわけではなく、臣下として傍に置いているけれど、取捨選択や決断はメンシコフと決めることが多い状況ってことね。
カードからのメッセージは「手紙」「月」「クマ」「庭園」。
母性性を活かしたコミュニケーションを大切にして人脈を広げなさいって感じね。
実際、マルタさんは皇帝から呼び掛けられるとき「かぁちゃん!」みたいな感じで呼びかけられていたから、母性性はしっかり活かされているわね。
ケルト十字の結果
さぁ、今度はケルト十字ね。
カードの展開はこんな感じだったわ。
まず目が行ったのは「願望」の所に「太陽」が出ている事よね。
結婚とか栄光とか、そういったものよね。
これは、皇帝と意気投合しちゃったから出てきた願望でしょうから、別にマルタさんが強欲とかそういうわけじゃないのよ。
普通にこういうものが見えてきちゃったから、手が届きそうだから、願望になったということね。
そしてもう一つ大アルカナで出ているのがマルタさんの立場や状況を指している「魔術師の逆位置」ね。
これは後ろ盾のなさや知識不足なんかを指しているわね。
グランタブロウでも「知識を得ること」は指摘されていたわね。
ただ、これは結果の所で「ペンタクルの8」が出ていることから分かるように、解決する…
と言うよりは、自分の足りていないところを認識して実直に勤勉に物事に取り組む様子を指しているわね。
そして安定した様子を示しているわね。
やや何か足りないような、もう一歩踏み込みたいような、そんな気配も残しつつ・・・
そして、マルタさんの現状は「ペンタクルの2の逆位置」、バランスを崩しているわね。
変化に対応しきれていないとも取れるわ。
そうよね。
下女として働いていたのに、まさか皇帝と意気投合して貴族みたいな暮らしになるなんて、思いもしないわよね。
そして障害として出てきたのは「ワンドのナイトの逆位置」ね。
これは皇帝の支配欲とか衝動的な行動を指すのかしらね?
ここをうまく制御できれば、バランスを崩した状況も少しずつ立て直せるってことね。
そして周囲の反応は「カップの5」ね。
心配してたり、落胆してたりって感じね。
これは無理もないわよね。
貴族たちは下女上がりのどこの馬の骨とも知らない女と意気投合している皇帝なんて、面白くないわよね。
でも、ネガティブな所にしか目が行ってないだけど、視点を変えれば「ポジティブなものもある」って気付けると思うのよね。
「大帝の気性の荒さをうまくコントロールしてくれる」とかね…
ピョートル大帝の死とその前後のエカチェリーナ1世
今回は、まだ何者にもなっていない未来のツァリーツァ(皇后)エカチェリーナ1世さんが、マルタさんだった時の占いを見てみたわ。
マルタさんは、外見は「とても美人!」でもなくて、「スタイルがいい!」とかでもなくて、どちらかと言うと骨太でふくよかで、日焼けしていて庶民的だったと言われているわ。
肖像画も、親しみやすい雰囲気よね。
そんな雰囲気のマルタさんが皇帝の寵愛を得ているのは、
「黒魔術を使っているに違いない!」
みたいなことも言われていたそうよ。
でも、どうかしらね?
彼女は皇帝の激しい気性を恐れない、数少ない人だったのだから、皇帝にとっては貴重な存在だったはずよね。
一緒にいて楽しい時間、心地よい時間を過ごせる相手として大切にされたのがマルタさんだったのじゃないかと思うわ。
皇帝の精神安定剤だったのは有名な話だしね。
お手紙とかもたくさん送っていたそうよ。
皇帝「こんなに手紙送ってるのに、全然返事くれないやん・・・」
みたいな感じだったそうよ。
マルタさんはその後、ピョートル大帝が無くなるまでツァリーツァの地位にいたわ。
けれど、皇帝は跡継ぎを決めかねたまま亡くなったわ。
皇帝としても、跡継ぎ決定に関する法律(帝位継承法)を作ったりして、かなり焦っていた様子なんだけど、決められずにこの世を去ってしまったのね。
さて跡継ぎ候補として残されたのは、
だったのね。
エリザベータさんもアンナさんも、非嫡出子なので周囲が認めない。
ピョートル2世さんが即位しちゃったら、マルタさんは処刑される可能性もある。
ということで、メンシコフさんや近衛連隊と協力して、ピョートル大帝崩御のタイミングでマルタさんは女帝として即位することにしたのね。
マルタさんは亡くなるまでの2年間、サンクトペテルブルクでメンシコフと共にピョートル大帝の政治を引き継いで惰性で走ったわ。
ピョートル大帝の政治とはどんなものだったのか?と言うと、こんな感じね。
- ロシアの専制君主政治『ツァーリズム体制』の完成
- 首都をモスクワからペテルブルクへ遷都(皇帝自ら大地を埋め立て新都建設に従事した)
- 西欧化政策を進め、ロシアの大国化をめざした
首都をバルト海に面したペテルブルクに移すことで、ヨーロッパへの窓口にしたのね。
さらに、ヨーロッパ各国から攻め込まれた時も、すぐに対応できるし技術や産業も取り入れやすくなったわね。
ピョートル大帝の歴史上の評価は様々だけれど、1代でこんな大きなことを成し遂げたのはすごく大変だったでしょうし、急激な変化に周囲はついていくのが大変だったのは想像に難くないわね…
因みに、ロシアのウラジーミル・プーチンさんはピョートル大帝を尊敬しているそうよ。
今回はこんなところで終わりにしましょう。
ロシアの歴史は面白いわね。
クーデターばかりで、皇統の血筋なんてあった物じゃない。
基本的には処刑を繰り返して邪魔者を排除して、クーデターで玉座を奪う。
これがおそロシアなのね・・・
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参考書籍
- 河島みどり. 『ロマノフの徒花 ピョートル二世の妃エカチェリーナ』. 草思社. 2011
- 河島みどり. 『ピョートル大帝の妃―洗濯女から女帝エカチェリーナ一世へ』. 草思社. 2002
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