1741年11月だったわ。
「明日、クーデター起こす予定なんだけどぉ、うまく行くかしらねぇ~…」
とのご相談は、美貌が暖炉の火に照らされて影を作ったエリザヴェータ・ペトロヴナさんだったわ。
かの有名なピョートル大帝のお嬢さんだわね。
出典:wikipedia
このクーデターが成功すれば、彼女は晴れてロシア皇帝となるわけ。
ピョートル大帝のお嬢さんなのに、非嫡出子ってことで皇帝になる道を阻まれてしまっていたのね。
この時期は前年の1740年に先の皇帝アンナ・イヴァノヴナが亡くなったばかり。
後継者としてイヴァン6世が居たけれど彼はまだホヤホヤの赤ちゃん。
イヴァン6世の母親のアンナ・レオポルドヴナが、失脚した家臣から摂生を引き継いだばかりで政治的に不安定な時期だったわ。
そんな状態で、政治的に危険視されたエリザヴェータ・ペトロヴナは修道院に幽閉されそうになって、「クーデターを起こそう!」ってことになったみたいね。
当時彼女はまだ31歳よ。
美人だし、おしゃれも好きだったし、華やかな生活が大好きな人だったわ。
そんな人が大人しく修道院に幽閉なんてされるかしら?
応えは「No!」よ!!
クーデターは起こせるときに起こさないと人生負けてしまうわ!!
幸い、彼女はピョートル大帝のお嬢さんってことで、軍部の人気はバツグン!!
これを利用しようってわけね!
あの時は話を聞いていて興奮したわ!
心配だったのはイヴァン6世がどうなるかって事ね。
彼はまだ赤ちゃんだもの…
さて、そんな明日クーデターを起こすタイミングでの彼女の占い結果、見ていきましょう。
エリザベータさんのグランタブロウ結果
さぁ、それじゃぁ、エリザベータさんのグランタブロウの結果を見てみましょう!
「淑女」がエリザベータさんね。
「紳士」のカードが誰に相当するのか、結構難しいのよね。
でも、やはり彼女の婚約者で亡くなったホルシュタイン=ゴットルプ家の公子カール・アウグストだと思うわ。
彼女の婚約者はイケメンだったのよ。
エリザヴェータさんもメロメロだったわ。
さぁ、じゃぁカードを読んでいくわ。
まずは「淑女」の位置は左から3列目の最下段にいるわ。
この最下段に彼女がいることから、自分の力というよりは周囲の力でもって状況が動いていくことが見えるわね。
これでクーデターが整ってしまうんだから、彼女の人気が伺えるわね・・・
彼女の周囲にあるのは、「庭」「太陽」「錨」「騎士」そして「ネズミ」のカードね。
ここから見えるのは、今まで同様に社交界の華として存在していたかった彼女の願望と、そしてその願望を利用して彼女を未来(クーデター)へと引っ張っていこうとする軍部の存在が見え隠れするわね。
更に、「太陽」を挟んで「紳士」のカード。
やはり彼女にとって、亡くなったイケメンの婚約者は憧れであり希望でもあったんじゃないかしら。
しかも太陽を挟んで二人は向かい合っているわ!
実は相思相愛だったんじゃないかしら!
でも婚約者は亡くなってしまって、彼女の人生に影響を与えながらも、表に出てくることはもうない。
そんな位置にあるわね。
さて、次は左上の2枚のカードを見ると、「ユリ」「魚」のカードがあるわね。
彼女の人生で大切なものは、「権力」と「お金」という事ね。
彼女が最も美しく華やかであるために必要なのが「権力」と「お金」だったということで、贅沢のために必要なものだったのね。
「魚」のカードの隣に「鍵」、その下に「ハート」のカード。
この位置からしても、彼女の心を掴むカギも「お金」だったという事が現れているわ。
ご機嫌取りにはお金がイチバン!!
ってことね。
ここから先は彼女の未来を見ていくわ。
一番上の段のカードは「星」「月」「塔」「コウノトリ」「船」と続くわね。
コレすごいのよね。
彼女は政治的にも人気者になるし、彼女の願望も叶っていく、そういう結果なのよ。
つまり、「クーデターは成功する」という占い結果だったのよね。
ただ、彼女の治世では外交に関しては「今一つ孤立しがち」という風にも読めるわね。
もしくは、「孤立しがちだから、外交にも力を入れていった」という感じかも知れないわ。
2段目も、彼女の未来を見ていくわ。
左から3列目移行が彼女の未来を表すわけだけど、カードは「ハート」「家」「クローバー」「カマ」「棺」「花束」となっているわね。
クーデター成功の後は、身近な者だけがいる心休まるような場所で幸せを感じられるけれど、何か運命的な出会いによってそんな場所以外での幸せを見出す暗示ね。
なんというか、心穏やかな時間も良かったけど、結局のところ刺激的なものが彼女の幸せになるって感じなのかしら?
この時はそんな感じでリーディングしたわ。
その下の段も、彼女の過去から未来を見ていくわ。
2列目から右に向かって「庭」「錨」「騎士」「道」「犬」「キツネ」「樹」ね。
「庭」と「錨」から、楽しいなら現状にとどまっていたかった彼女の本心が見えるわね。
でも現状は修道院行きの話が出てきて、楽しくない。
だから軍部と共にクーデターを起こす、という構図が「騎士」と「道」のカードから読み取れたわね。
その先には、「犬」と「キツネ」の組み合わせだわ。
信じていた人に裏切られる未来があるわ。
でも、最後に「樹」のカードがあることから、彼女は裏切りの経験によって成長すると出ているわ。
裏切った人の本当の目的は何だったのか、色々と考えてみると良いわね、って話をしたのを覚えているわ。
さぁ、最期の4段目よ。
「淑女」のカードから右に「ネズミ」「山」「指輪」「本」「クマ」と出ているわね。
「ネズミ」は、ヒトの利益をすする輩のことね。
権力者の占いをすると、ビックリするくらい彼らの周辺にはいつもネズミが居るわ。
もう「そういう物」と思っておきましょう。
「山」「指輪」「本」「クマ」で、権力による隠ぺいがあって何かの契約が難航すると出ていたわ。
これがどんな出来事を指すのか、後々まで分からなかったわ。
もしかしたら、政治に関わって欲しかった誰かがいたけれど逃してしまったのか、あるいは「本」の上にある「キツネ」によって邪魔されてしまったのか。
う~~ん、ロシア史は表に出てこないことも多いから、分からないのよね。
私はこの占いの後すぐに彼女の元を去ったから、なおさら分からないわ・・・
一番下の段の4枚は、カードから彼女へのメッセージよ。
「鳥」「十字架」「鞭」「蛇」ね。
嫉妬や情欲をコントロールしなさい。
そうすることで、あなたはパートナーとうまくやっていけるわ。
と、カードは伝えていたわね。
彼女は最後まで、嫉妬をコントロールできずに、宮中の女性は苦労したという逸話が残っているわねぇ。
まとめ
今回はロシアの女帝エリザヴェータ・ペトロヴナさんのクーデター前夜の占い結果を見てみたわ。
エリザベータさんは、ルイ15世との婚約話が上がったこともあったのよ。
でもこれはフランス側が拒否したみたいね。
理由は色々あったのよ。
ブルボン朝からしたら、お母さんのエカチェリーナ1世は貴族の出ではないことや、
「未開の地であるロシアの皇女との結婚なんてもっての外…。」
って気持ちもあったようね。
というのも、ロシアが近代化・大国化したのはピョートル大帝の治世になってからだったわ。
ピョートル大帝の治世以前のロシア皇女というのは、教養も無く、どこにも嫁げない立場だったのよ。
「ロシア貴族やヨーロッパの貴族に嫁げばいいじゃない?」って思うかもしれないけど、「ロシア貴族は皇帝の奴隷であり、皇女が奴隷に嫁ぐなどありえない」って考えだったみたいね。
さらに教育も施していないし、宗教も違うから他国にも嫁がせられないってワケね。
そんな存在だったロシア皇女の待遇が変わったのが、ピョートル大帝の治世からだったのよ。
エリザヴェータさんと彼女の姉のアンナさんは、ちゃんと教育を受けて育ったの。
そして姉のアンナさんはスウェーデンの王位継承権を持つホルシュタイン公子と婚約・結婚したわ。
エリザヴェータさんは政治への熱意は無くて、ただ華やかな生活をして、贅沢させてもらえればそれで満足だったタイプなのよね。
だから実際に政治を行ったのはロシア貴族たちだったわ。
エリザヴェータさんは、人を見る目は確かだったのよ。
だから、彼女が選んだロシア貴族だちは優秀で、内政は安定していたと言えるわね。
所でロシアの有名な女性のお名前って、「アンナ」と「エリザヴェータ」と「エカチェリーナ」ばっかりね。
ちょっとややこしいのよね。
お名前に関しては洗礼名だからというのがあるわね。
エカチェリーナと言えば、ロシアには名君と謳われた女帝エカチェリーナ2世が居るわね。
それにエリザヴェータさんのお母さんのエカチェリーナ1世だって、庶民から女帝にまで上り詰めた方よ。
彼女たちの占いも、よかったら見て行ってね。
-
参考資料
- 河島みどり. ロマノフの徒花 ピョートル二世の妃エカチェリーナ. 草思社. 2011
コメント